まだ夏の空は続いていて、飲み込まれてしまいそうなほど青い空には
絵に描いた様な白と灰色の分厚い積乱雲が広がっていた。
この季節特有の湿気った空気のおかげで伸びた髪が首元にまとわりついてくる。
緊張の中、興奮は多少抑えられても髪の膨張だけはどうにもならなかった。
激しい通り雨が幾度かやってきては通り過ぎていく。
知らぬ間に上がっていた雨の様に、張り詰めていたものも程無く緩んでいった。
小さな世界をこれでもかというほど狭めてきたのは
それ以上に到るまでの勇気がなかった所為だった。
それでも時々、柔らかく受け止めてくれる人が道の真ん中から
こちらに向けて手を振ってくれる。
それを見て自分も小さく手を振り返してみる。
ただそれだけの事で、俯いていた顔は前に向き直ることができる。
下を向いてたら見えないものが沢山あったと知る瞬間。
子どもの頃にこの指とまれの歌を歌っているのは
いつも自分以外の誰かだったことを思い出した。
そんなある日。