Moment #2



この線からこっちは、わたしの陣地だった。

棒切れで砂の上に線を引いて向かい合う。

こどもだったころ、わたしたちはこうしてお互いの居場所を主張し合った。

教室の机の境目、グラウンドの硬い地面に引かれた頼りない白線。

どれもふたりの狭い世界をきちんと隔てていた。


あの線を踏んだのは彼だ。

頑なな境界線はいとも簡単に踏み越えられてしまった。


それで、あのときわたしは怒ったのだったか。

歪んだ線をつま先で弄びながら、彼がわたしの名前を呼ぶ。

許したのは君じゃあないかと責めるように。

そうだ、そうだ。

肩を押し合い小さな世界から押し出すゲーム。

線は知らぬ間につながっていて、そして円になっていた。


「ねえ、ぼくたちは抱き合わないと」

こんな狭いとこで生きていかなきゃならないんだから。

明日も降りそうにない雨は、どうにか線を掻き消してみせた。

( ぼくらの国境 )

Words:やまもとさん https://twitter.com/yama27__
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