Moment #1


傾けた愛情は、容易に手折られた。

上体から切り分けて、心臓からまるごと全部、あの人にあげてしまって構わないのに。

触れられないものは、どうにも不安になるんです。

だから例えば、昨夜あの人をくるんだバスタオルを抱きしめていたいし、

あの人の指先から吸い終えた煙草をうばってしまいたい。

(あとは、そうね、あわよくば口付けたい。それって普通よね?)

そういう罪深い欲望は、許されるでしょうか。

におい、感触、かたち、あらゆるすべて、

あの人が空気を揺らすことさえ憎からず思っているのだから。


ねえねえ、かみさま。

そのうちでいいから、きっとわたしの願いを叶えてくださいね。

それまでわたし、一枚ずつ並べた愛を、馬鹿みたいに数えて待ってるわ。

( 乙女の愛情 )

Words:やまもとさん https://twitter.com/yama27__
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