むしゃくしゃした気持ちを落ち着かせたくて
カメラを片手に散歩へ出る。
自分がどうしようもなくて悔しくて悲しくて
だけどそんな簡単に涙は出てこなくて。
ファインダーを覘く瞬間、訪れる心の静寂。
一通り収めると缶コーヒーを片手に公園へ赴いた。
風が強く伸びた髪が背後へ持っていかれる。
西日の差しかかったこの時間に吹く風は生ぬるく、
汗でべとつく肌にまとわりつくような湿気た空気が
夏を予感させた。
縁石に腰掛け横に置いた缶に手を伸ばす。
プルタブに指をかけると
いつの間にか見覚えのあるお客がそこにいた。
風で飛ばされてきたのか自ら望んでやってきたのかは
わからなかった。
彼はその狭い空間を壁に向かって永遠に
ぐるぐると廻りつづける。
てんとう虫の名前の由来は
確かお天道様に向かって飛ぶからだったっけ。
もしもっと高く空の上まで飛んで行けたら
こいつも灼熱の光に身を焦がすのだろう。
誰かみたいに。
あーあ。なんでこんなに怒ってるのだろう。
何故思い通りにしたいと願ってしまうのだろう。
思い通りだなんて自分の心でさえ叶わないのに。
狭い缶コーヒーの上で壁伝いに進み続ける珍客を眺めていたら
まるで今の自分を眺めているような気がした。
懸命で滑稽。
さぁ、君も私もどうやってここから抜け出そう。
しかし喉が渇いた。